50360人が本棚に入れています
本棚に追加
/959ページ
ソファに腰掛け、じっと俯く笹森の身体を左手で抱きかかえるようにして、俺は右手で彼女の手を握っていた。
月曜の昼休み。
俺達は、カウンセリング室のソファに座り、香ばしい香りに包まれながら、コーヒーが入るのを待っていた。
「ミルクとお砂糖は、入れた方がいいのかしら。」
振り返る今日子先生に、笹森は小さく、はい、と答えた。
彼女の身体は固く強張り、今にも震えだしそうだった。
俺は、出来るだけ明るい調子で、今日子先生の後姿に声をかけた。
「笹森、緊張してるんで、…ミルク多めに入れてあげてください。」
「え、緊張してるの?笹森さん…。」
笹森は、俺の顔をちらっと見てから、
「少し…。」
とか細い声で言った。
「緊張することないよ、今日子先生相手に。」
「そうよ。…今日は、来てくれただけで充分。カフェオレだけ飲んだら、教室に戻っていいから。」
先生はマグカップを二つ持って、こちらに歩み寄ってきた。
「…どうぞ。」
ミルクがたっぷり入ったカフェオレを受け取ると、笹森の顔にようやく、ぎこちないながらも笑顔が見えた。
「ありがとうございます。…いただきます。」
今日子先生は、人懐っこい微笑みを返し、俺にもマグカップを渡すと、キャスターつきの椅子に腰かけ、自分のコーヒーに手を伸ばした。
.
最初のコメントを投稿しよう!