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「腹減ったよ、笹森」
「ん。朝ごはん、作るね」
繋いでいた手をやっと放し、タオルケットを捲り上げる寸前、自分がTシャツ一枚しか着ていないことを思い出し、慌てて下着とショートパンツを探す。
ベッドの中をごそごそしていると、
「夏休み、終わらなければいいのにな」
春山くんがぽつりと呟いた。
「去年までは、夏休みなんてただ長いだけで退屈だと思ってたけど……。
今年は、なんていうか……。
今までで一番短く感じる」
「……」
顔を上げると、春山くんは、ね、とこちらに笑いかけた。
「……うん……」
胸がいっぱいになって、私はぴょんと春山くんの首元に抱きついた。
押しつぶされた春山くんがうぐっと声を漏らす。
「……どうしたの」
「なんでもない……」
春山くんが自分と同じように感じていてくれたことが、嬉しかった。
息苦しいほどの愛おしさに、心臓がきゅっと切ない音を立てる。
――私……。
本当にこの人が好きなんだ。
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