1年後…

6/7
794人が本棚に入れています
本棚に追加
/85ページ
「出来たぞ! これは傑作だ!」 「自分で言わないよ、普通は」 原稿用紙の束をドンっと机の上に置く父は自慢げにそう言った。 それをぺらぺらと捲りながら、柚子は冷めた視線を父へと投げつけた。 「あれ? 神社は実名なの?」 「あぁ。少しでもウチの神社を有名にしたくてな!」 「へー。無駄な抵こ…なんでもない。てか、お父さんが恋愛小説書いたの?」 「そうだ。どうだ?」 「普通年頃の娘に聞く?なんか…気持ち悪い」 「気持ち悪……っ」 50歳を超えている父が書いた恋愛小説(しかもモデルは自分)など読みたくないと、柚子は紙を捲る手を止めた。 一方の父は娘の“気持ち悪い”にショックを受けたようで、机に額をつけて俯いていた。 「まぁ、柚子ってば。父さんがショックの余り泣き出しそうよ」 「あ…。ごめん。つい本音が…」 「フォローになってないぞ」 そんなこんなで、柚子に冷ややかな目で見られた小説だったが、予想を反しベストセラーとなった。 話の中で登場した神社という事で、本の発売以降、主に若い女性の参拝客が大幅に増えた。  
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!