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全員の視線を浴び、それでも物怖じしない声の主は、慎士だ。
「オレらが一番知りてぇのは、そういうことじゃないンスよ」
宝石さながらに赤い目は、どこか責めるような厳しい色も含んでいる。
「鋼介はどうなったンスか」
瞬間、場の空気が一気に冷えた。
窓や壁が一斉に取り払われ、冷たい外気が雪崩れ込んでくるような感覚だ。
「あの後、鋼介はどうしたンスか!」
再び尋ねる慎士を、木宮は止めない。むしろ、彼にしてはよく耐えた方だと思う。
鋼介に関する話題を、右京が意識的に避けているのは明白だ。情報の少なさに苛立ちすら覚えていたであろう慎士なら、その姿勢を崩そうとしても不思議ではない。
「……」
うんざり、とでも言いたげな顔でため息をつく右京は、溢れ出る白煙の向こうに一瞬だけ隠れてしまった。
しかし、彼も話さなければならないとは思っているらしく、物憂げに膝を正す。
くわえていたタバコを右手に挟み、息をついて、一言。
「死んだ可能性が高い」
ビシリと、音を立て。
それまで十分すぎるほど冷えていた室内の大気が、ますます厳しく冷却された。
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