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また、はぐらかされた気がするが、俺様は、学ちゃんに言われた通り箱を開けてみた。
っ!!
『ぁ…、う。っ学ちゃん。これはっ。』
「えぇ。潤様の為に僭越乍ら、作らせていただきました。」
箱の中を開けると、一度何かの雑誌に、載っているのを見た事がある。庶民のお母さんが誕生の日に作ると言う、ショートケーキがあった。
クリームの上に苺が置いてある、とてもシンプルな、高級スイーツの様な高級感もあった物では無いけれど、何処か温かみが有るような、作った人の愛情が伝わってくるようなそんなケーキだった。
『こ、これは庶民のショートケーキでわないかっ。』
「潤様、一度食べてみたいと呟いていたので、図々くも私が作ってみたのですが…。宜しければ、一口で良いので食べてみてはくれませんか?」
…学ちゃん、覚えていたのか。俺様は、庶民が言う、お袋の味だの家庭料理だのと言うものに実は、凄く憧れている。
だが、自在食べれる訳がない事も、分かっている。
俺様が思い出す、家庭料理と言ったら、一流シェフが作ってくれるご飯しか、記憶に無い。
『本当に、俺様が食べて良いのか?その、此は家庭料理に入るのだろ?家族でしか食べてはいけないのでは、無いのか?』
「大丈夫ですよ。これは、潤様に食べて頂く為に作った物なのですから、それに潤様は、私の家族も同然の方ですから。家族と同じ…いや、それ以上に大切な方ですから。」
そう言うと、学ちゃんはクスクスと笑いながら、また、俺様のほっぺを撫でてきた。
…今日は、このケーキに免じて、俺様のほっぺをナデナデするのを許してやる事にした。
何だこの、なんとも言えない気持ちは、何か胸が温かくなるような感じだ。
俺様は、何だか居たたまれなくなり、ケーキを一口頬張った。
「お味はどうですか?お口に合うといいのですが…。」
『ぅまい…。』ボソッ。
何だこの味、スポンジと生クリームと苺だけのとてもシンプルなケーキなのに、凄く美味いぞ。…初めて食べる味だな。
――あぁ、そうか。これが
『お袋の味。』
俺様は、自分の頬が、揺るのを感じながら、もう一口ケーキ頬張った。
まぁ、ぶっちゃけお袋の味なんか解らないが、このケーキの味が、庶民が言うお袋の味と言うものだったら良いなと思う。
カシャッ。
…む。今どこからか、シャッターオンらしき音が聞こえたような。
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