第七章 戦場での選択肢

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 夜叉の大きな特徴として、まず何よりも皮膚が堅い。生半可な力と技術では弾かれてしまう。  次に、手足の爪が発達している。鋭利に伸びたそれは長く切れ味も鋭い。頬まで裂けた口には数十もの牙がズラリと並んでいる。  これが夜叉全類に共通する特徴。  空夜叉はこれに翼が付加させる。翼といっても鳥に似た感じ。重厚で羽ばたくのに疲れそうな感じだ。  虚空夜叉にも翼があるが、此方(こちら)蝙蝠(こうもり)のそれに酷似している。薄く、短い。そして、厄介なのが虚空夜叉になると魔法を扱える。それも無制限に。  アベルは刻一刻と近付く夜叉を前に、心を静かに保っていた。焦りと恐れは禁物。いつ何時でも冷静さを欠いてはいけない。  ふぅと一息を吐いて、 「螺旋魔法、発射準備!」  大声で号令を下す。  丘の上にいるギルド兵士が四人一組をいくつも作り、殱剣の命令に従っていく。  複数もの人間が集まり、魔力を込めて一つの魔法へと練り上げる。それは螺旋を描きながら築き上げられ。個人で出す魔法の威力を遥かに越える力を持っている。  唯一の注意事項として、炎系と水系が混じりあうことができないという点。これにさえ気を付ければ、未熟とはいえ学生でも作り上げることができる。  丘が(まばゆ)い輝きに包まれる。ギルド兵士の作った数十の螺旋魔法が大気中に形成され、今か今かと発射されるその時を待っているようにも見えた。  ーー……まだだ。もう少し引き付けてから……。
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