第七章 戦場での選択肢

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 と、同時に練りに練られた数十の螺旋魔法が夜叉の群れへと突き進んでいく。四色の糸が織り重なったその姿は、まさに虹のようで。黒い外皮の夜叉の群れを彩り豊かに染め上げた。  数多の地夜叉を葬り、意識をアベルに奪われていた空夜叉の翼を食い破る。一時的とはいえ、夜叉の行進が止まった。足が止まり、にわかに狼狽える。  ここだ。 「ギルド兵士よ!」  吼翅がすかさず空に吠える。 「吼翅たるこの私に! 私たちの危機に手を貸してくれた殱剣様に! リザリア支部ギルド兵士の勇猛果敢さを見せつけろッ!!」  螺旋魔法を解いたギルド兵士が、雄叫びをあげながら各々の得物を手に取る。構える。突撃する。 「夜叉を一匹たりともリザリアに向かわせるな! ここで確実に殲滅するぞッ!」  吼翅は最後にそう叫び、未だ空に漂っている空夜叉に攻撃を開始した。  士気の高さはアベルがいるからではないだろう。彼女のカリスマ性によるものだ。  全員が彼女の期待に応えようと、恐れを抱かず夜叉の群れを相手にしていく。  アベルはフッと笑い、柄を握る右手に力を込めた。すぐそばに虚空夜叉が三匹いる。どうやら相当ご立腹なようだ。 「人間如キガ……」  虚空夜叉は話せる。  空夜叉よりも高度な知性を誇り、狡猾で人間を見下す輩がほとんど。アベルと対峙している三匹もその類いの虚空夜叉らしい。  アベルは挑発するように、 「今からその人間に殺される気分はどうだ?」
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