♯01

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首を動かし、体の向きを変え、360度ぐるりとする。 『そう言ってもらえると…嬉しいです。』 また、その人の声。 …どこ…? かろうじて2車線を確保した道路の向こう側…。位置的には、この輸入雑貨店から道路を挟んだ向かいにある飲食店の前。 そこに。 その人はいた。 ダークな色のTシャツ。腰で結んだ長くて白いエプロン。 長身で短髪の男性。 離れていても、暗くても、その人がそこにいることがはっきり分かるほどの大きな体。 この店のコックさん?シェフ? 話している相手は…お得意様かお偉い様だろうか。 そして、その人の体に見え隠れしている女性が1人。 店から漏れる明かりを頼りに目を凝らすと、彼女は若くはない、ちょうど私の母親くらいの年齢だということが分かる。 彼女…ではない? 奥さん…ではない? あ…。 私…何を気にしてるんだろう。 彼の傍らに寄り添う女性が何者なのかを、必死で判断していた自分に戸惑った。 『はい!頑張ります!今後とも、よろしくお願いします。』 彼は、頭を下げる。これでもかってくらいに。 お偉い様…なのかも。 コックさんなのに、私たちのような一般企業に勤める社会人のするような姿を見れて、どこか親近感が湧いてしまう。 私の目は、彼の動きを夢中で追っていた。 お偉い様たちの後ろ姿が小さくなる。 彼は、となりの女性に微笑んでから店の中へ戻ろうと体の向きを変えた。 『あ…。』 .
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