第一章 【野良猫】

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「はっ!?」 急に体が離れる。 「わっ…悪い…。 っていうかお前……」 「…何で謝るの? 私を買ったんでしょ? あっ雇ったのか。 でも…こんなキスが良いなって理想は消えたけど…」 私は笑顔を見せた。 「どんなキスが理想だった?」 「もう良いよ」 小さく笑って目を反らした。 「良いから言えよ。 俺がその理想を壊したんだから」 「そうだなぁ…。 雰囲気が良い場所で、綺麗な夜景を見ながらロマンチックなキス…かな…」 言ってて恥ずかしい。 「今日の外食は中止だ」 えっ? 「ルームサービスで我慢しろ」 「ルームサービスなんてあるの!? 本当にホテルみたい」 彼は立ち上がり、電話で“いつものを今日は2人分”と注文して、それが終わると名刺をまた捨て、私の手帳をぐしゃりと破いた。 「ねぇ…名前教えてよ…」 「何で?」 「名前で呼びたいから…」 ちょっと照れ臭い。 「ケイ」 「えっ?」 「ケイで良い」 「それ本名?」 「違うけどケイで良い」
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