第一章 【野良猫】

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「ねぇ!! どこの店? ちょっと話しない? 少しで良いから」 顔の前で両手を合わせて私の行く手を阻む、黒服のキャバの勧誘。 5メートル歩けば違うスカウトがまた声をかけてくる。 「名刺…」 「えっ?」 「今忙しいから気が向いたら電話する」 私は手をヒラヒラさせて名刺を要求した。 「はい。 給料は今の店の倍出しても良いから、考えてみて!!」 男は飛びっきりの作り笑いで名刺を渡してくる。 「うん…わかった。 じゃあね」 こんなやり取りを何度も何度も繰り返し、夜の繁華街を出た。 華やかなようで…どこか寂しく黒い欲望が渦巻く汚い街。 …そんな印象。 私は足早に近くのコンビニに立ち寄る。 「いらっしゃいませ!!」 ここだけが別世界のよう…。 ピッ!! 「シールでよろしいですか?」 「いいよ」 ミネラルウォーターを1本だけ買った。
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