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「……泣くなよ…」
そんな私を強く抱き締めてくれた。
「今朝…ミケは“行ってらっしゃい”って言ってくれただろ?
笑顔で。
凄く久しぶりだった。
誰かに見送られることも、誰かが家で待ってるから早く帰ろうと思うことも…」
「……」
「それだけで十分だ。
ミケがここに居て笑って待っていてくれるだけで、お前がここにいる意味がある。
わかるか?」
……正直わからない。
それだけの理由でどこの誰かもわからない人間を家におくなんて…。
でも1つだけわかるのは、この人も寂しいんだ…。
孤独なんだ…。
「仕事…大変なの?」
「何でだ?」
「疲れてるのかなって…」
「俺の仕事のことはミケは考えなくて良い」
抱き締める腕が強くなる。
「ねぇ…本当にさっき抱こうとした?」
抱き締められる温もりが心地良い…嫌じゃない。
「さぁな…」
きっと私が泣かなくても、この人は私を抱かなかった気がする。
「私ね…ファーストキスだったんだよ…」
男の腕に顔を埋めた。
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