第三章:最後の伝言

99/121
923人が本棚に入れています
本棚に追加
/364ページ
この場から離れたいという思いが、胸の奥から込み上げてくる。 「…………」 それでも一度目を瞑り、深く息を吐き出すと、わたしは無理矢理足を前に進めた。 「渋谷さん……」 わたしが側まで来るのを確認すると、渋谷さんは自分の足元を視線で示した。 そこには、間違いなく誰かが倒れている。 身体が震え、訳の分からない吐き気に似た気分を必死に押さえつつ、わたしはゆっくりと視線を下げる。 足を見て、胴体を見て、そして……、頭部へ。 「…………どうして?」 その顔を見た瞬間、わたしはその場に膝を付いた。 希望は、消えた。 目の前に横たわっているのは、間違いなく、友人である米元 憂李本人だった。
/364ページ

最初のコメントを投稿しよう!