† 光 †

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「ふぅ-、疲れた…これだけの階段で こんなにも 神経遣うなんて…本当、今までの有り難さが 良くわかるなぁ…乃愛も疲れたでしょ… ゆっくり過ぎて…」 「ママ、ちょっと休んでから 動こう… 私は大丈夫だから…」 目が見えないのに 乃愛と二人で 外出する事に 家族全員が反対していた。 私のワガママを 乃愛が家族を説得し、 責任を感じながら 私を誘導していた。 しばらく休み 目的地へ着いた。 目的地に着いても 私は何処に冬馬が居るかわからない。 来てるか来てないか 私には見えない。 (冬馬…アナタは… 来てくれてるのかな? 私には見えないけど アナタには私の姿… 見えるよね… 白い杖を持ってる事で 私の目が見えてない事…気付くかな? 冬馬… 何処にいるんだろう? もう一度…アナタを この目で見たかった 冬馬…………) 涙が静かに頬を伝った。 「ママ、何か…ジィーッとこっちを見てる おじさんが 居るんだけど…」 (冬馬…冬馬が来てる…絶対、冬馬に違いない…) 乃愛の言葉で冬馬が来てると確信した。 「乃愛、その…おじさんの方向にママを向けて……… 後…おまじない… 覚えてる? ニッコリ笑うおまじない…乃愛も その、おじさんに向かって ニッコリ笑って…」 乃愛が 私の体の向きを変えた。 「おじさんに向かって?ヤダ…何か 変に思われたら…めっちゃ…こっち見てるよ… 大丈夫かな?」 乃愛が心配するのも無理もない。 いきなり、見知らぬ人にニッコリって言っても 何も知らない乃愛には笑えるはずがないと思い 私は 乃愛に言った。 「ここはママの思い出の場所…もしかしたら その、おじさんは ママの初恋の人かも…」 最近 乃愛もクラスの男子に初恋をし 今年のバレンタインデーに 初めてチョコを渡したからか 初恋という言葉に 反応を示した。
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