6466人が本棚に入れています
本棚に追加
/226ページ
その日、トウヤは非番だった。
本当なら、非番の日はゆっくりしたいトウヤだったが、双子から「遊ぼう!」とせがまれ、トウヤ達親子は、昼食を食べ終えた後、親子4人で仲良く公園に来ていた――のだが……。
「た、助けてぇ!」
今、この国に居ないはずの人物が、有り得ない事を言いながら突然トウヤ達の前に“落ちて”きたのだ。
親子4人の目の前に、見事に落下したその人物は、辺りに土煙を巻き上げたまま、起き上がってこない。
普段の尊大な態度や、傍若無人な性格を知っているだけに、目の前に落下した人物の言葉を、容易に受け入れられないトウヤとミリィは、揃って落下したまま動かない人物に向かって問い掛ける。
「「はい?」」
すると、落下した人物こと“エリシア”は、フラフラと……それこそ、今すぐにでも倒れてしまいそうな様子で立ち上がり、茫然自失と言った表情をしているトウヤとミリィに、もう一度同じ事を言った。
「た、助けて」
「「無理っ!」」
それこそ、エリシアが言い終えた瞬間に、トウヤとミリィが揃って首を振る。
「何がなんだか、全く分からないけど、エリシアで勝負にならない相手に、俺達が何か出来るわけ無いだろ!」
「トウヤの言う通りです!
グレン! ほのか! 2人とも、私達の後ろに来なさい!」
エリシアの様子から、異常事態が起きていると確信したミリィは、エリシアが現れた事に喜んでいる双子を呼び寄せる。
「ア……アンタ達!
『親を助けよう』という気持ちは無いの!」
「「無理っ!」」
焦り気味に言い寄ってくるエリシアに向かって、トウヤとミリィは、またもや揃って首を振ってみせる。
「アンタ達~!」
そんな娘夫婦に向かって、エリシアが火球を作り出した時だった。
「楽しそうじゃな」
エリシアの作り出した火球が、突然破裂した後、上空から聞き覚えのある声が聞こえる。
その声を聞いた途端、あのエリシアが「ヒッ!」と短い悲鳴をあげ、トウヤ達に凄まじいスピードで近付いたかと思うと、トウヤとミリィの背後に隠れてしまう。
「「…………」」
隠れたエリシアに、双子達が大喜びする声に見向きもせず、トウヤとミリィは空中にクラシルを掴んで浮かんでいる“ルフィーナ”を見上げていた。
「久しいのぅ。そなた達の後ろに隠れている、エリシアを渡してもらおうか?」
ルフィーナは、満面の笑顔で話し掛けてきた。
最初のコメントを投稿しよう!