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「今から【あれ】を取り戻すのは難しいぞ?」
「うん。ここはドロンだな」
……は?
「ドロンだと?」
「あぁ。だから頑張ってくれ、【魔狼】のその仲間たち」
「おい!」
俺の叫びはヤツにきかなかった。
【闇猫】の気配が遠退き、そしてかわりに【ルル】の意識が浮上する。
「……ほぇ?」
「…………」
キョトンとするルルに沈黙する俺。
本当にばっくれやがった、あの駄猫。
何しに出てきやがったんだ。
「ねぇ、ダーリン」
ダーリンにツッコム気力がない。
「今の状況、って」
「あのバカ猫が出てきたせいで古の邪竜は覚醒寸前」
「だったら当初の目的に?」
「バカ、最悪だ」
舌を鳴らす俺。
青年――古の邪竜から生ぬるい邪気のようなものを感じた。
ぼこん、と古の邪竜の肩が大きく膨らむ。
不細工に伸びた髪が抜け落ち、目は空洞のように黒くなる。
額には二本の角が生え、口の歯が鋭さを増す。
背中が裂け、硬そうな甲羅のようなものが現れた。
明らかな変化。
人間とは異なり、そして凶悪な姿へと。
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