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「男の人って幾つになっても男の子よね、何でも勝ち負けを決めないと気が済まないみたいだし??」
「……コドモで悪かったな」
俺がふてくされるように答えると、ユキがクスクスと笑った。
「でもね……。なんか、懐かしい」
「懐かしい?」
「思い出したの、岳史と初めて会った日のこと。あのときも岳史は私に煽ってきたし」
「煽る……?」
そう言えばそうだった。ニューモデルの板、板とお揃いのウェアのユキをコブ斜面に誘導しようと俺はユキを鼻で笑ってけしかけた。そのあともユキの古いフォームを直そうと喧嘩仕掛けにユキにふっかけた。でも喧嘩とか勝負をつけるためじゃなく、ユキは褒めて褒めて伸ばすタイプじゃないと判断したからだ。教えるためのコツというか。
「いや、あれは」
「分かってる。同じニューモデルの板を履いてる私に負けたくなかったんでしょ?」
「はああ?? アホ! そんな訳ねえし」
ほら、すぐムキになるし?、とユキは笑う。俺は落ち着こうと息を吐いた。
「……悪かったな」
「ううん。岳史がああやって私を奮い立たせてくれたから、私はここにいるんだなって」
「ああ。このゲレンデだったな……」
スクール小屋の窓から、初めてあの板を見たときは心が躍った。まさかあの板がこうして赤い糸を紡いでくれるとは予想だにしなかった。
下から恋雪と深雪が颯を間にして手をつなぎ、登って来た。
「お父さん転んだ!」
深雪が責める。
「恰好悪ーい」
恋雪が追い討ちを掛ける。でも颯はにこにこして手のひらを出した、ハイタッチをする。コイツだけは俺の味方だ。俺は立ち上がり、しゃがむと颯を肩車しようとした。
「っ!!」
転んだときに突いたときに傷めてたのか、手首がズキリとした。
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