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「そういえば今日賢者が来るらしいぞ」
「そうかそうか!それでな、揺れは結構続いて私は思わずベットからって賢者だと!!!???」
櫂があまりにも普通に言うので気付くのに遅れたが、確かに彼は"賢者"が来ると言った。
リリスのあまりにも大きかった声は、その場で食事をしていた全員の耳に届いた。
一瞬で静まった食卓。
その全員が今の言葉を確認するかのように櫂の顔を見る。
「あの賢者がここに来るのか!?」
代表としてリリスが櫂に問いかけるが、仮に彼女がいなかったとしても誰かが櫂に責めよっていただろう。
「そうらしいぞ。何か俺に用があるってさ」
―――面倒だよな、とお気に入りのキセルに火をつけ食後の一服を始める。
「カイさんに用事………一体誰が来るのですか?」
シーラの横で静かに食事をしていたフィオンがナフキンで口を拭きながら尋ねる。
「さぁ?誰が来んのかは知らねぇし、賢者達が誰なのかも知らねぇ」
煙を吐きながら、彼女達にとってとんでもないことを言う櫂。
この世界では賢者とは小さな子供たちでさえ知っている、むしろ知らない方がおかしい一般知識である。
賢者達の話は、小説あるいは絵本となっている程有名なのだ。
そのため、いくら無知な者でも賢者を知らないと言うことは有り得ない。
リリスなど櫂のあまりにも常識のなさに目が点になっている。
「………カイさんは興味のないことは本当にどうでもよいタイプなんですね」
コーヒーを啜りながら櫂の見方を改めるフィオンは、ここにいる中で1番落ち着いていることだろう。
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