狂った住民

3/26
22人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
その家は近所で知らない人がいないとまで言われている程に『奇妙』な家だった。 通称『時計屋敷』と呼ばれているこの家には、たった1人だけで住んでいる人がいる。 その名もレモンさん。 勿論本名ではない。 彼女は時計屋敷の縁側でよくレモンを食べていた。 それが理由で勝手にレモンさんと皆は呼び出すようになる。 レモンを食べているその姿は美しく、奇妙な家に住んでるということを含めても、みんなからは好意の目を向けられていた。 そして僕もそんな中の一人だった。 ある日、僕は今まで誰もしようとはしなかったことを決行する。 レモンさんに話しかけるということだ。 何故そうだったのかは覚えていないけれど、レモンさんに話しかけようとする人は1人もいなかった。 話しかけたらレモンさんが消えてしまうのではないか、なんて噂も流れていたような気がする。 まあ、とにかく、誰も話しかけようとしなかったレモンさんに僕は話しかけたのだ。
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!