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「それで、回収したい物は何なんですか?」
早朝の公園で、未央は犬の散歩に来ていた女性に訊いた。
途端に、相手の女性は目を丸くした。
「あなたが回収屋さんなの?」
「ええ、そうです」
「驚いたわね。もう少し……そう、二十代前半くらいの男の人だと思ってたわ」
驚いた――
それは正直な気持ちだろう。
実際、未央自身も自分が依頼する方なら、そんな風に想像したに違いなかった。
けれど、若くて女だから頼りないとは思われたくは無い。
だから依頼人と話す時は言葉遣いには目いっぱい気を付けて、知っている限りの難しい言葉で話すようにしていた。
「そう言われる事は多々あります。それは、致し方の無い事だとも思っています」
大人びた未央の口調に、女性は少し微笑んだ。
「信用していいのかしら?」
「それはあなたの判断にお任せします。けれど、今まで受けた仕事に失敗はありません」
女性は片手を頬にあてて、足下に大人しく座っている愛犬へ視線を落とした。
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