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「……いつまで笑っているんだ?」
「だって……芙蓉に注意されただけで」
思い出し笑い炸裂。
「きょとんとしたあの間抜けな顔!」
言葉にならず腹を抱えての大爆笑。
「それは是非とも見たかったなあ」
残念そうな飛高に芙蓉はいたたまれず朔の笑いを止めにかかる。
「図星を指したら鳩が豆鉄砲喰らったように黙った。ただそれだけのことがそんなにおかしいか?」
「幹部は貴女の力量を見誤ったと今頃良からぬことを画策してはるんでしょうね」
春香の物騒な考察に朔はようよう笑いを収める。
「偽れとは言わないけど……飾り気のなさすぎるのも考えもんよ?芙蓉……皆が皆、一様に真っ直ぐな貴女を認めてくれるわけやあらへんのよ」
「私は……私自身の真っ直ぐが何なのかがわかりません。だから仕方ないのです。諦めてくださいませ、春香様……私はこのようにしか生きられません」
真っ直ぐに春香の目を見て話して、平伏した。
一朝一夕ではなしえないその所作はひとつひとつが美しく春香ですら見とれてしまうほどだった。
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