偽物の夢

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意外にも彼は、結婚指輪をはめていた。 ある日私は聞いてみた。 「愁斗さん。ソレ……結婚指輪ですよね?」 こんな時、夢は決まって小首を傾げ不思議顔をする。 自分でもなんでこんな顔が出来るのか分からないが、夢を演じている時は何でも出来るのだ。 「あ……コレ」 彼はマジマジと自分の左手の薬指に目をやった。 「うん。結婚してる」 彼はすまなそうに呟いた。 「奥さんにはもう半年近く会ってない」 と話し出した。 「どうしてですか?」 夢はまた可愛らしく首を傾げる。 「お金の為に結婚したから愛はない。向こうもきっとそうだろうし、きっと一人の方がラクだろうと思って結婚式の当日から別居した」 そんな……私はあなたを愛したかった。 あなたが先に 『愛する気がない』 と私を突き放したのよ。 「これからも別居を続けるんですか?」 私は夢にそう尋ねさせた。 「どうかな?俺の勝手でさせてしまった結婚だから。戸籍は汚してしまったけど、彼女が望むなら離婚してもいいと思ってる。一緒に住まないのも変に関わって彼女を傷付けたくないからだし……」 そんな……私はあなたとの結婚が決まってからずっと、もうずっと傷付いてますよ。 あなたに相手にしてもらえない自分に対し、ひどい絶望感さえ感じています。
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