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真夜中の校舎はとても静かだった。
普段生徒の話し声で賑わう教室も、部活に打ち込む生徒の活気で溢れた校庭も、この中にはない。
静寂だけがこの空間を支配している。
そんな静寂を打ち破り、甲高い音を響かせながら俺達は全力で走っていた。
「ゼェ、ゼェ……んっ、ぷ……」
どこを走ったか分からないくらい、無我夢中で……気がつくと、俺の脚は停まっていた。
逃げなきゃいけない。
じゃないとアイツが来る。
アイツはずっと俺を追い掛けてくる。
高嶋も、彰も、信也も、加奈子も……みんなアイツに殺され、奪われたんだ。
残っているのは俺と舞だけだ。
「ね、ねぇ……どうなってるの?」
後ろから喉を震わせ、こちらに声を投げ掛ける舞。
しかし、俺は答えない。
「ねぇったら……」
再度こちらに声をかける舞に俺は、
「知らねぇよ……」
と、突き放すように一言だけ言う。
その間、俺は舞の顔を見る事が出来なかった。
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