Part 11 ― 堕ちた鴎 ― (出題編)

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. 「向坂、ちょっといいか?」  夕刊の降版時間も過ぎ、しばらく息抜き出来る時間帯。  コーヒーの紙コップを手に屋上のベンチへ座った千聖に、大学時代からの親友・溝口が声を掛けた。 「ああ、いいけど?」  答えながら少し横へ動いて、座り直す。  溝口は千聖の隣へ腰を下ろすと、周囲を気にしてから小声で話しはじめた。 「じつはな、面白い話しを小耳に挟んだんだよ」  コーヒーを口に運びながら、千聖がちらりと溝口を見る。 「どんな?」  問い掛けると、溝口はその言葉を待っていたとばかりに、ニッと口角を上げた。 「このあいだ、岩間岬の啼鴎亭で転落事故があったの覚えてるだろ?」  敢えて「いるか?」では無く、「いるだろ?」と問い掛けたのは、千聖の記憶力が優れている事を知っているからだ。  期待に反せず千聖が「ああ、荷物運搬用のゴンドラが落ちて、一緒に乗っていた女性が亡くなったってやつだ」と答える。  溝口は、小さく頷いて話しを続けた。 .
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