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「えー! どうして辞めちゃったの!?」
驚いて声を上げたのは、絵夢ではなく嶺垣だ。
「あれから自分なりにいろいろ考えたんです。アイドルでいるのは楽しいけど、その代わり時間や自由がほとんどない。あたし、お父さんとお母さんにもう一度一緒になってほしいんですよね」
照れ臭そうに視線だけを地面へ落とし、日向は心境を吐露する。
「お金とか、有名人になるとか、そんなのはもういらないから、昔みたいに家族みんなで暮らせる普通の生活を取り戻したいんです。そうしたら、妹の茜だって安心するかもって思いませんか? ……あたしたち、両親の離婚が決まったときは毎日のように泣いてましたから。だからきっと、また家族が元に戻れば茜も喜んでくれるかなって」
絵夢を掴む日向の腕に、ほんの僅かだけ力がこもる。
「アイドルなんかやってたら、そういう共有する時間ってあんまりなくなっちゃいますからね。仕事を減らせば済むのかもしれないけど、それならいっそのこと一般人に戻っちゃおうかなって思って」
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