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「写真に写る人物じゃない。空間にいる人物の合計でしょう?」
「はい」
「写った7名の家族とは別に、写真を撮る人間がさらに1人以上いるはずです」
大和は少し遠めから写真を見る。
「タイマーやリモコン式のカメラも考えましたが、名家一家の記念写真で、それは味気なく感じました。それに富豪の一族なのに、家族の誰かが写真を撮るのも不自然。写真家を呼んだと思うのが自然かと」
「ふふ。大正解。明晰なご様子の大和さまには愚問でしたね」
「いいえ。疑り深いだけです」
光はもう一度、屋敷の右側へ向かって手の平を掲げる。
「合格です。どうぞ、お通りになるか、わたくしの顔面にツバを吐き罵(ののし)って下さい」
「じゃあ行きます」
大和はツバを吐く衝動を抑え、ギアを鳴らし車を進めた。
妙な問題を出され、彼は様々な思考を浮かべたが、直後。正面の建物に夢中となる。
秀石と呼ばれる、石の積み重ねでできたルシールベージュ色の外壁。
近づいた屋敷は彼の想像よりさらに巨大で、古代からそびえる厳粛な図書館か博物館、またはコロシアムにも見える。
近くで見る邸宅は地面から照らされたライトで、奇妙な八角形を感じさせない、雄大さと偉大さがあった。
正面玄関の扉から右へ逸れ、メイドが言った道なりに車を進める。
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