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「えっと、じゃあ行きます」
最後に聞いたメイドの発言は、恐らく幻聴だろう。
メイドが足を下げたのを確認すると、大和はギアと気持ちを切り替え、車を進めようとした。
「あ、お待ち下さい」
大和は慌ててギアを戻し、サイドブレーキを引く。再度、光は車の窓際までやって来た。
「わたくしとしたことが、あまりにもドストライクでグットルッキングな大和さまに、大切な試験を忘れていました。どうぞ、このダメなメイドを車で弾き飛ばして下さいまし」
「試験?」
大和は意味不明な光の言葉を無視し、要点のみ呟いた。
「はい。お車をそのままに、わたくしの出す〝問い〟にお答えください」
「はあ」
変わった趣向があるとは噂で聞いていたが、金持ちとそれに関わる者は発言を含め、奇妙で意味不明だと、大和は思う。
光は、前掛けのポケットから1枚の写真を取り出した。
『 この写真に写る、お部屋の中に、人は何名いますでしょうか? 』
差し出された写真には、政治家が撮る記念写真のように、整列した何人かの人物が写し出されていた。
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