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俺は居間から一番離れた部屋を借りた。掃除はしっかりとしてあるみたいだけど、本当に長く使われていなかったみたいで、荷物や家具は何も置いてなかった。
「ジャン、布団を敷くから真ん中を陣取るの止めてくれないか?」
部屋の真ん中で、だらーんっとお腹を見せた状態で伸びているジャンを俺は足でつついた。
だって、仕方ないだろ?両手が布団で塞がってるし、口で言ってもジャンは退いてくれないんだから。
「ハフッ」
何?今、何つったの?ジャンさん、お生憎様。俺に犬語は分かりませんよ。
俺は仕方なく、足でジャンを壁の端まで押しやった。ウーっとか唸ってたけど気にしない。ここは俺の部屋だ。
「ん?おい、ジャン。今、何か聞こえなかったか?」
俺が敷き布団を床に敷いて、掛け布団を手に取った瞬間に足音がしたんだ。トタトタって、小さい子供が走ってるみたいな。
ジャンはここにいるし。小さい子供なんてここにはいないだろうし。
「こ、怖いな」
俺は急いで部屋の障子を閉めた。あぁ、障子があって良かった。
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