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「悪いあやせ、待たせたな」
俺がそう声をかけると、嬉しそうだったあやせの表情がみるみるうちに無表情へと変わっていく。
……あ、あれ? おかしいな。
頬に嫌な汗が伝うのがわかる。あやせに近づくたび、鼓動がどんどん早くなっていく。
ヤバい。そう身体が訴えている。
今のあやせはヤバい。マジで洒落にならないくらいヤバい。
今まで色々なあやせを見てきたが、ここまで無表情のあやせなんて見たことねぇ!
に、逃げないと……。逃げないとマジで殺され……。
「お兄さん」
「ひぃ!?」
「やっと……来てくれましたね……」
無表情のまま、座っていたベンチから立ち上がるあやせ。俺はもう、あやせが怖すぎて我を忘れてひたすら頭を下げた。
「ごめんなさいごめんなさい。土下座でもなんでしますから許してください」
「……言い残す言葉は……それだけですか?」
「命、命だけはご勘弁をっ!」
「……」
「……あ、あやせさん?」
突然無言になったのが気になり、下げていた頭を少しだけ戻す。
するとあやせの表情は……無表情のままだった。
慌ててまた頭を下げ、あやせの言葉を待つ。
「……お兄さん、なんでここに呼び出したかわかってますか?」
「わかりません!」
怖さのあまり即答してしまった。
「……そうですか。じゃあ尚更タチが悪いですね」
「ごもっともでございます!」
「……覚悟は、出来てるんですよね?」
「いやマジで命だけは!」
「……」
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