四話「悪魔の子」

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「これじゃあどっちが悪かわからないじゃない? エスト悪い事してないのに、あんな言われた方。言葉は怖いよ……」  寂しそうに呟くマリアの核心をついた言葉に、エストは思わず目を見開いた。  ――言葉は時に見えない刃と化す。心に力を与えたり、心に傷を負わすという不思議な力がある言葉。 「だから、私はエストを信じるわ」 「悪魔の子なのに?」 「エストはエストでしょ! 何も悪い事ないじゃない!」  声を張り上げ、怒りを露にしているマリアの顔をエストはきょとんとした表情で見つめる。目が、マリアの大きな瞳がじっとりと潤んでいる。本当に、エストの事を思って怒っているとわかった。  だけど、昔から迫害を受けてきたエストは素直にお礼など言えなかった。マリアの言葉に、感情の波はあまり起こらなかった。いや、起こっていないと思いたかったのか…… 「こんな、時」 「?」 「どんな、事を言えばいいのか、わ、わからない」
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