第一章~偶然~

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「お嬢さん。感じてんのかい?ふふふ・・・」 耳元で声がした。 気持ち悪い声。 息が耳にかかるほど近い。 <やだ・・・怖い・・・> 声を聞き、急に体が震えだす。 反応してはダメだと頭ではわかっていても、それを抑える事がどうしてできない。 「声が聞いてみたいなぁーー。」 言葉とほぼ同時に男の手が私のお尻をスーツの上から鷲掴みした。 「やっ・・・」 驚きからか、恐怖からか思わず声が出てしまった。 しまったと思ったがもう後の祭り。 「可愛い声で鳴くんだね。もっと聞いてみたくなるよ。」 男の手の動きが変わった。 その手が増え両手で触ってきた。 「ヒッ!」 怖さで言葉を失うとはこの事か。 だが、黙っていては男のされるがままになってしまうと考え、心の中の残っていた一握りの勇気を振り絞り、私は男に言った。 「や、やめてください・・」 声に出してみたらひどく弱い声になってしまった。 だが、それも全てが無意味。 「やめてほしかったら一回付き合えよ。もし、嫌とか言ったら明日から毎日可愛がってやるよ。ふふふ・・・」 サァーーーー・・・ 頭から一気に血の気が引いてゆくのを感じた。 見開いたままの目からは止めどなく涙がこぼれてゆく。 終わった・・・・ 心の中にはもう、絶望の2文字しか残っていない。
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