PastChapter―Ⅰ†発端…

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  神騙雨雫。 宇宙を束ねる実質上の最高機関、宇宙連邦にて彼の名を知らぬ者は皆無であろう。 否……その分野、つまり氣導学、科学、生物学、心理学、これらを究めんとする者にとって、彼は神に値する人物である。 辺境とは言え銀河1つ古来より統治していた旧家に産まれ、卓越したセンス、奇抜で躍進的な発想、圧倒的な頭脳、そして常人の数十倍ものの氣量。 どれをとっても神に愛されたとしか言えない、生まれながらにして持って得た才能。 宇宙連邦の権力がそれぞれに集約された宇宙最高の権力機構十三機関、その頂点に立つ十三機関長。 通常なら三十路後半で任命されても期待の“新星”と言われるその地位へ僅か二十歳で就任したその事実も、彼がこの“四年”で打ち立てた枚挙にいとまいの無き伝説を鑑みれば寧ろ当然の既決と言えよう。 天才にして鬼才にして秀才。 それが神騙雨雫であり、それこそが神騙雨雫。 まさに選ばれた人間。 そんな完全無欠としか言えない者なら、さぞ頼もしい部下、優しい友人、麗しの愛妻を持っているかと言えばそうではない。 愛妻こそいるものの、彼には頼もしい部下も優しい友人もいない。 孤高で孤独で孤尊。 それが神騙雨雫。       
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