第弐階

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檸檬に引き寄せられ連れていかれたのは、繁華街だった。 「ここなら大丈夫。」 「大丈夫って?」 怨憎会苦は、既に織り込んで閉まった。 雑多な繁華街で二人は、ベンチに座った。 「こんな所じゃ戦闘にならない。」 人々が行き交うこの場所は、殺し合いに不向きどころが出来ないであろう。 「大丈夫。彼と貴方の戦闘で、わかったわ。 彼は、プロよ。 プロなら………。」 「こんな所で戦闘をしないな。」 二人の前に黒衣の男がいた。 「ふざけた女だ。 嫌な場所に逃げるな。」 「あ、貴方程厭らしい性格は、してません。」 鼻で笑う男に檸檬は、震えながらにも答えた。 「厭らしい?」 「はい…貴方程…人に恐怖を……植え付ける術を知り行動……出来る人は、いませんよ。」 震えながらも答える檸檬に対して男は、微動だにしなかった。 「人じゃないからな。」 「人じゃないなら何なんだ?」 彼の軽口に苦識は、焦りを覚え口を挟んだ。 「お前と同じだ。 零崎 苦識 俺は、鬼さ」 さぞかし楽しそうに頬を歪め 三日月の口から牙が見えた。 「舐められたもんですね。我々零崎は、そんなに汚らしい鬼じゃないですよ。」 苦識は、異様な感覚に不安を覚え紛らわす為に言葉を紡ぐ。 異様な感覚は、日差しの強い昼間にも関わらず、苦識の身体は、冷水に浸かっているような感覚に戸惑いを覚えた。 「ハハハハハ!汚らしいか!?確かに俺は、血まみれの穢らわしい鬼さ。 だが………」 その感覚は、黒衣の男の殺意 殺気 身を壊されるような殺意に苦識は、苦しむ。 「だが?」 彼が噤んだ言葉を檸檬が聞き直す。 「……情は、ある。 夜まで待ってやる。 せいぜい残りの人生を悔いが無いように楽しめ苦識。」 そう言って黒衣の男は、踵を翻して人混みに消えて言った。
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