第五章 人形の欠片

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 考えた事はないか。  願った事はないか。  温もりを求めた事はないか。 「……」  少年は答えない。  嘆いた事はないか。  憎んだ事はないか。  君だって、"僕と同じ"だろう。 「……沢山の幸せがあったから、今の俺がある。君は、喜ぶ事や楽しむ事を――知ってこなかったんだな」  恐怖。  涙。  怒り。  温もりが欲しい。  温もりが憎い。  憎い。  憎い。  少年は足を止める。  胸が痛む。  痛い程、良く解る気持ちに心が押し潰されそうな感覚。  悲しい。 「……力になれなくて、ごめん」  そして少年はゆっくりと、赤い目の少年を抱き締める。  赤い目から、静かに涙が零れた。
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