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考えた事はないか。
願った事はないか。
温もりを求めた事はないか。
「……」
少年は答えない。
嘆いた事はないか。
憎んだ事はないか。
君だって、"僕と同じ"だろう。
「……沢山の幸せがあったから、今の俺がある。君は、喜ぶ事や楽しむ事を――知ってこなかったんだな」
恐怖。
涙。
怒り。
温もりが欲しい。
温もりが憎い。
憎い。
憎い。
少年は足を止める。
胸が痛む。
痛い程、良く解る気持ちに心が押し潰されそうな感覚。
悲しい。
「……力になれなくて、ごめん」
そして少年はゆっくりと、赤い目の少年を抱き締める。
赤い目から、静かに涙が零れた。
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