191人が本棚に入れています
本棚に追加
/375ページ
轟――と激しい風が吹いたのと同時、勢いよく飛び出す月喰人が真っ直ぐベリアローズへ刃を向ける。
唯一の武器であるサーベルは、壁に突き刺さった儘だ。
直線的な横薙ぎの軌道を後方へ身を返して躱すと、ベリアローズは壁へ向かって駆け出した。その後を、月喰人が追い掛ける。
距離は徐々に縮まる。
その様子を眺めてから、チッタは小さく息を吐いた。
ベリアローズは大丈夫だろう。何故だか、そう思った。
それよりも今は、頭に響く騒音が気になって仕方がない。
「……一方的な交信って嫌われちゃうよ」
そう呟いて、チッタはゆっくり、もう一人の月喰人へと歩みを進めた。
最初のコメントを投稿しよう!