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「欲しいのなら買ってはいかがですか?」
疲れた表情で言われ、申し訳ない気持ちになる。
「でも……やっぱりいいですっ!
家にあるのに買うなんて、そんな無駄遣いはやっぱりダメだと思います」
「そう言いますが、この場に立ち止まってから彼此三十分は経ちますよ?
諦めがつかない程欲しいのなら買って下さい。
でないと後で絶対に後悔しますよ?」
彼が疲れている原因は、目の前の棚に飾られた食器に一目惚れした私が原因。
マンションのキッチンには高級そうな食器がちゃんと揃っている為、これは必要の無い物。
頭ではわかっているのに、身体がこの場を離れてくれないのだ。
先程から諦めると言いながら動かない私に彼は疲れとも呆れとも取れる溜め息を一つ零すと、徐に携帯電話を取りだし、どこかに電話を掛けはじめた。
「総一です、至急私のマンションにある食器を全て処分して下さい。
ええ、今直ぐにです。ではお願いしますね」
…今の電話何だったの?
なんて言った?
唖然と見上げる私に彼は微笑んだ。
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