第 六 話

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「私の前で貴女がそうやって笑ってくださるのなら、いつかは友人になれるような気がします」 見上げた彼は、優しい眼差しに柔らかな表情。 「…そうですね。 私もなれるような気がしてきました」 夫婦だけど夫婦じゃない私達の目指す関係はわからないままだけど、私も彼も会う度にギスギスする今の関係を少しでも変えようとする気持ちはきっと同じなんだと思う。 「総一さんは何か欲しい物はないのですか?」 店内をぐるりと見回し問い掛けると、彼が微笑んでくれた。 「今日は優姫さんの欲しい物を買いに来たので、私の買い物には後日付き合って下さい」 会話の中での小さな約束。 『明日は雑貨を買いに行きましょうね』 家具を買った帰りに、彼が口にした約束。 私は忘れてしまっていた約束を、彼は忙しい時間の中果たそうとしていてくれた事に気付いた。 あの時は行きたくなかったけど、あの約束の翌日じゃないけど、あの口約束を果たそうとしてくれた彼の誠実さを嬉しく感じた。 「約束、ですね」 今日は少しだけ貴方に近付けた気がした。  
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