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「黙っていてごめんなさい。でも言う機会がなくて」
「じゃあ家出も彼のために?別にお前も年頃の娘なんだからいつかはこんな日が来るのはわかっていた。素直に話せば反対などしないのに」
もちろん、内心は認めたくない一心なのだが。
娘の彼氏などいっそ八つ裂きにしてしまいたい。
「あ、それは…」
まさか彼にさらわれたなどとは口が裂けても言えない。
「まぁ、いろいろあって」
「運命の人っていうのは…彼のことなんだね?」
「運命の人?」
大袈裟な物言いにシャルディは目をパチクリとした。
「お前がメモで残しただろう」
「あっ!」
そういえばエドワードがシャルディをさらったときに勝手にメモを残してたんだった!
「あっ、うん…まぁ、そういうことに…なるかな?」
モリスは大きなため息をつき、じろじろとエドワードを見回した。
見る限りでは容姿端麗、明朗快活でアンドリューに負けず劣らずの好青年ではある。
「シャルディ、彼は何者なんだい?」
モリスが尋ねると彼女は言いにくそうにはにかんだ。
「実は驚かないで聞いてほしいんだけど…彼はアンドリュー王子のお兄さんなの」
「!!」
モリスは驚きに言葉を失った。
確かに王子のようだと思ったのは認めるし、アンドリューと似ていると思ったのも認めるが…まさか本当に王子だったとは思いもよらなかった。
―ってことは何か?彼らは兄弟でシャルディを取り合っていたとでも?
見た目は普通、しかもお転婆で問題ばかりを起こすこんな娘がどうしてこうもモテるのかモリスには全く理解できなかった。
しかも何故か相手は王族。
よっぽどモノズキが多いのか。
シャルディが王家の仲間入りをするなんて考えるだけで頭が痛くなる。
世界の破滅だ。
我が娘は実は魔女なのだろうか?
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