キミと映画

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〈うわー。人がたくさーん!〉 「先輩。迷子にならないでよね」 〈大丈夫ー!〉  週末。私達は、駅前にある大型ショッピングモールに来ていた。  休日だという事もあり、家族連れやカップルで賑わっている。そんな中、先輩と二人で行動するのは割りと至難の技だ。  本来ならば、頭上で漂ってくれていれば迷子になることはないものの、久しぶりの外出にはしゃいでいる先輩はフラフラと消えては現れたりを繰り返している。 「……先輩。映画館は七階だからね」 〈はーい〉  と、返事をすると天井を突き抜けていく。  そして私がエレベーターで七階に到着すると、悠々とホールのソファーで寛いでいた。 「……全く」 〈加奈っぺ! 遅いよー!〉 「……しょうがないでしょ。私は先輩みたいに壁を通り抜けることはできないんだから」  小声で反論すると、先輩は両肩をヒョイと上げて唇を尖らせた。 〈で、今日は何を観るんだっけ?〉 「大切なキミ達に出来ること」 〈それ、面白いの?〉 「ネットであらすじを見る限りでは切ない系かな?」 〈へー〉 「先輩が観たがってた映画なんだってさ」 〈へー〉  と、記憶のない先輩はどこまでも興味がなさそうだけれど。  今日、私達がこのショッピングモールに来た目的は、生前に先輩が観たいと言っていた映画を観る為だ。  
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