蛍原家。

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しばらくして兄の部屋のドアが軋む音を立てて開いた。 考えてみれば、兄の顔を将樹は1年以上見ていない。最後に顔を見たのは、確か兄が食後の食器をドアを開けて出そうとしたとき、自分もドアを開けて目が合った。あれが最後だった。兄は、それ以来深夜に食器を部屋の外に出すようになった。 兄の行動は、最近までほとんど分からなかった。トイレや風呂は、家族が出掛けた後か深夜に済ませているようだし、それ以外は何をしているのかさっぱり分からなかった。 最近までは──。
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