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真っ直ぐ見る鋭い視線に怯まないようしていたが、またもや図星だということに言われて初めて気付く。 でも、何故か引きたくない。 「グッ、グチはともかく言い訳くらい聞いてくれてもいいじゃないですか?」 「……。 あなたの中に準備されている言い訳はただの自己弁護ではないですか?」 なんとまあ、正しい姿勢で淡々と話すキツネだろうか。 でも言われていることに反論できず、吉川さんが新たな言葉を紡ぐのを警戒態勢で待つしかできない。 「指摘されることに腹を立てるのは勝手でしょうが、自分の正当化しかしていないのではないですか? 本当に自分を省みていますか?」 「……」 別にバトルをしているつもりはないが、今の私は明らかに劣勢。 静かにゆっくり問いかけてくる吉川さんに対して、私は子供っぽい言い訳しか浮かんでこない。 「……な、なんでそんなこと言われないといけないんですか? 吉川さんは私の何が分かって――」 「今日で4回目の指導になりますが、全く努力や成果が見えないからです」 スパッと上等な刀で竹を切るような清々しさで吉川さんは言った。 「……」 私は言葉を失い、視線を吉川さんの顔から自分の手に移した。 そんな、身も蓋も無いこと言わなくたって……。 ぎゅっと制服のスカートを握る。 私、ちゃんと真面目にやってるのに。 間違おうと思って間違ってるわけじゃないし、怒られたら胃がキリキリするほど悩むこともある。 終わらなくて残業することも少なくない。 やれる限りはやっているはず……。 でも、それでも……。
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