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「返事が無いということは聞いて欲しくは無いということですね。 涙が止まったようですから、続きをしてもいいでしょうか? あと30分もありませんので」 「……あ」 開いた口が塞がらないとは、まさにこういう時に使う言葉だ。 チェックを再開し始めた吉川さんを正面で見ながら、私は有り得ないこの流れに絶句していた。 カタカタと性能のいい静かな電卓の音と、パラパラと流れるように元帳を開いていく音を聞きながら、私は段々腹が立ってきた。 私の周りにはなんで普通の男がいないんだろう。 なんで私だけがこんな惨めな思いをしないといけないんだろう。 「……き、聞いて欲しいと言ったら聞いて下さるんですか?吉川さんは」 半ば挑戦的な口調で話し掛ける。 いつもならこんなこと言えるはずが無い。 けれども、今日の私は自分で言うのもなんだが情緒超不安定、それに加えて生理前のイライラ最高潮だった。 「聞いてもいいですが、“上司に怒られた”だの、“自分は頑張っているのに”だのは結構です」 「――っ!!」 的確な急所をストレートパンチされて、頭の上で星がチカチカした幻覚さえ見えた。 辛うじて、 「なんで分かって――」 という言葉が出る。 パタン。 元帳がまるで吉川さんの代わりに溜め息をついたように閉じられる。 「先程からグチや言い訳を言いたいような、そんな表情で眉間にしわを寄せていらっしゃるので」
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