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「……で、っできないんだから、仕方ないじゃないですかっ」 ボロボロッと、大粒の涙が一気に溢れた。 視界がいきなり万華鏡みたいに分散する。 「ちゃんとしよう、ちゃんとしたいって気持ちはあるんです。 ……っ。 でも、求められているレベルに自分の能力が全然追いつかなくて……っ、だからっ……」 心の奥の根っこにある部分が顔を出すと、途端に涙が止まらなくなった。 私、こんなに泣くようなキャラじゃないのに今日何回泣いてるんだろ。 自分でも分かるが、これは正真正銘開き直りってやつだ。 恥ずかしくて情けないが、何故かこんな時に今まで溜まっていたストレスが溢れ出て来て止まらない。 ポケットからハンカチを出そうとするが、先程のトイレの後にデスクに置き忘れてきたらしく、仕方なく手の甲でグシグシと拭う。 落ちてしまったマスカラが短いひじきみたいに手に付いた。 「……」 正面に座っている吉川さんから私の長机の方へ、スッと紺色のハンカチが差し出される。 「今日は一度も使用していません。 それで拭いて、早く泣きやみなさい」 優しい声ではなかった。 まるで命令されているかのような口調だったが、こういうことをするような人には見えなかったので、少し驚いた。 「……っ」 お礼を言おうと思ったが嗚咽で上手く言えずに、ハンカチを手にとって目元と鼻を拭った。 狭い研修室の緊迫した空気が、ほんの少しだけ違う色に変わった気がした。
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