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翌朝…。
ジリリリリリ…
ハル「…ふぁぁ…おいナツ! もう朝だぞ、起きろよ」
ナツ「…うぅ…お前のおかげであまり眠れなかったんだよ…てゆーかいつも言うがお前のロードワークの時間に俺を起こさないでくれ…」
意外だがハルは昔から寝起きがよく、ナツとアキは寝起きが悪い。
ハル「お前も最近体がなまってきたみたいだから付き合ってやるってんだよ、健全な精神は健全な肉体からって言うだろ?」
ナツ「…またお得意の騎士道精神学か…とにかく今日はまだ寝る…」
ナツはハルと反対の方を向いて布団を頭まで被ってしまった。
ハル「ちぇ…しゃあねえな」
ハルはジャージに着替えて日課のロードワークに出掛けていった。
ハルがいつものコースをシャドーボクシングを交えながら走っていると、先の方にたまに見かける高貴そうな老婆がうずくまっていた。
ハル「ん?」
ハルは老婆に気付くと、どうしたのか気になり声を掛けた。
ハル「どうしたんすか?」
ハルが声を掛けると老婆は振り向いた。
深い皺が入った目尻からはとめどなく涙が溢れている。
ハルはただ事ではないと直感して老婆に詰め寄った。
ハル「ちょっ…どうしたんすか!? 何かあったんすか!?」
老婆「ううっ…なんでもないんだよ…私が不用心だっただけ…」
そう言って老婆は立ち上がり、よろよろと歩き出そうとする。
それをハルが事情を聞こうとして引き止めた。
ハル「でも本当に大丈夫ですか? どこか調子が悪いなら俺がおぶりますよ?」
ハルのお節介に諦めた様に老婆は事情を語り出した。
老婆「いや、体調は別に悪くないんだけど…実は今日は旦那との結婚記念日でね…年甲斐もなく旦那に何十年か前にプレゼントしてもらった指輪をしたら気分が良くなって指輪を付けたまま散歩してたんだよ」
ハル「…それで?」
老婆「…この道を歩いてたらたまにこの辺りで見かける中年の感じのいい男が話しかけてきてね…つい気を許してしまって指輪を見せてあげたんだ…そしたら渡した瞬間に走り去ってしまってね…せっかくおじいさんに買ってもらってなくしたらいけないからと何十年も保管していたのに…私が不用心なばかりに…うぅ…」
ハルは泣き出した老婆の肩にそっと手を置いて優しい口調で話し掛ける。
ハル「お婆ちゃん、そいつの顔は覚えてるの?」
老婆「ああ、たまに見かけてたからよく覚えてるけどもう来ないだろうねぇ…」
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