第一幕 依頼   

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「アッ、はい。母を、母を探して欲しい んです!」 濁りの無い森下少年の瞳の中を、土方はそらすこと無く見詰める。 森下少年もたじろぐ事無く、土方を見返した。 「隆司、彼に椅子を」 少年の背後に居た隆司が察した様に、声を掛けられる前に椅子を用意していた。 「警察には?」 「ハイ、母さんのお店のスタッフの方に 、付き添って貰って 、 、 、 」 思い詰めた言葉、森下少年の瞳に不安の影がよぎる。 「お母さんが居なくなったのは、いつ頃 の事なのかが知りたいのだが!?」 森下少年が語った内容は、以下の様な事で有った。 【森下少年の母親は川越市内で、美容室 を経営している。 名前は森下裕美(ひろみ) 42才 父親は森下隆夫(たかお) 46才 住いは母親は川越市内、父親は豊島区東池袋で、輸入家具と雑貨の会社経営者 1年前に離婚、母親は名字を旧姓に戻さず、森下を名のっている。 森下少年は父親と豊島区に住んでいるが、川越県立K高校に通っている。 母親が居なくなったのは、[ひと月]前の事で、考え得る限りの所は訪ねたが、未だ消息不明で有る。 息子から見た母親は、およそ人から恨みを買う様な人物では、無いとの事だった。】 「お店を全面的に管理している、チーフ から僕に連絡が有り、マンションを訪ね たが母親は居(お)らず、長期の旅行に 出た形跡も無かったんです。 スマホに掛けても、電源が切られている のか、未だに繋がりません 毎日、この事務所の前を通るたび、高校 生の自分が依頼して、調査してもらえる のかが分からず、訪ねる勇気も無くて 、 、 、 ズルズルと時ばかり過 ぎて、母さんは戻らないし 、 、 、」 話し終えると森下少年は、[ホッ]と息を吐き土方の返答を待った。
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