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「ひとつ聴きたいんだが、【覚悟】は有
るかい?
探偵事務所に調査を依頼すると言う事
は、君が知らなくて済んだ事までも、全
て表面に浮び上がらせてしまう、と言う
事なんだが。
失踪してひと月、我々は色々な可能性を
想定し調べて行く。
そこには、君が望まない結果も有り得
る、だから聴いている【覚悟は有るのか
】と」
少年の瞳を覗き込む様に、土方は訊ねた。
最悪、息子を捨てても良いと思える男と、全てを捨てて消息をたった場合。
もしくは事件に巻き込まれ、拉致等で帰る事が出来ない場合。
または既に死んでいて、死体が発見されていない場合等、考えればキリがない程の案件なのである。
だから、土方は先に上げた細々(こまごま)とした詳細を省き、敢えて少年の【覚悟】だけを確かめなければ、成らないと考えた。
「はい、僕はまだ17才で母の全てを、分
かっていた訳では無いし、今回の様な長
期に渡って、消息が掴めないなんて事
も、これまで有りませんでした。
最悪の事も想像して、何日も眠れない夜
を経験しました。
分かった事は、結果がどうあれ、僕は真
相を知らなければ、いけないんだと思っ
た事です。
父とは離婚して、今は一緒に暮らしては
いない母ですが、僕にとって唯一人(た
だひとり)の母ですから。
【覚悟】はあります」
少年の言葉を土方は真摯に受け止め、頷いたのだった。
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