第一幕 依頼   

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「ひとつ聴きたいんだが、【覚悟】は有 るかい? 探偵事務所に調査を依頼すると言う事 は、君が知らなくて済んだ事までも、全 て表面に浮び上がらせてしまう、と言う 事なんだが。 失踪してひと月、我々は色々な可能性を 想定し調べて行く。 そこには、君が望まない結果も有り得 る、だから聴いている【覚悟は有るのか 】と」 少年の瞳を覗き込む様に、土方は訊ねた。 最悪、息子を捨てても良いと思える男と、全てを捨てて消息をたった場合。 もしくは事件に巻き込まれ、拉致等で帰る事が出来ない場合。 または既に死んでいて、死体が発見されていない場合等、考えればキリがない程の案件なのである。 だから、土方は先に上げた細々(こまごま)とした詳細を省き、敢えて少年の【覚悟】だけを確かめなければ、成らないと考えた。 「はい、僕はまだ17才で母の全てを、分 かっていた訳では無いし、今回の様な長 期に渡って、消息が掴めないなんて事 も、これまで有りませんでした。 最悪の事も想像して、何日も眠れない夜 を経験しました。 分かった事は、結果がどうあれ、僕は真 相を知らなければ、いけないんだと思っ た事です。 父とは離婚して、今は一緒に暮らしては いない母ですが、僕にとって唯一人(た だひとり)の母ですから。 【覚悟】はあります」 少年の言葉を土方は真摯に受け止め、頷いたのだった。
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