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色紙を壁に飾ったりして綺麗に着飾って、お菓子やおもちゃを用意して子供や看護婦さんとかを誘ってた。
『まほら兄ちゃん、いっしょにうたおう!』
そして、よく一緒に歌を歌ってた。
気が付けば、僕は香緒里ちゃんとよく一緒に歌った歌を口ずさんでいた。
「もう、香緒里ちゃんと会う度にそれを歌うんだから!」
あれ? そうだっけ?
僕が不思議そうに僕の彼女の言葉を呟くと、僕の彼女は“そうよ”とまた怒った様に言った。
「病室が一緒の時は会う度に今日、香緒里ちゃんと何するとか何したとかそればっかりで!」
「ご、ごめん……」
どうやら、僕も僕の彼女の話を聞かないことをしていたらしい。
お互い様と言うか、同じことをしていたことに変な縁を感じて、可笑しくって、僕はいつの間にか笑い出していた。
「ちょっと、なに笑ってるのよ」
「あははっ、ごめんごめん」
きっと車椅子の運転を再開した、今の僕の彼女は頬を風船の様に膨らましていることだろう。
本当に、僕の彼女はわかりやすい女(ひと)だ。
「ほら、外が見えてきたよ。早く行こう、僕の彼女」
「もう、そうやって誤魔化すんだから」
不満そうに言いつつも、僕の彼女は車椅子のスピードを速めてくれた。
そして外に繋がる出入口の前に着くと、出迎えてくれるガラス張りの自動ドアがゆっくり左右に開け、
僕と僕の彼女はとある病棟の廊下を後にした。
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