ウェイターは脇役……のはず

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そんなことよりも、さっきの痛みが気になる。 経験はないが、これはまさか、もしかすると…… 俺はよろよろと立ち上がり、備え付けの化粧台の鏡を見た。 「………………あああああああぁぁぁぁぁっ!!!!」 今日叫んでばっかりな気がする。 それもこれも会長のせいだが。 「く、く、首筋に……!」 「ああ。良いだろそれ。気に入ったか?」 「もうあんた喋るな」 マジで信じらんねーわこれ。 「何でこんなところにキスマーク付けてるんですか!!」 首筋、しかもウェイターの制服では隠せないところに…秀逸すぎる。 ふつふつと怒りが湧いてくるのを感じ、会長の方を睨みつけた。 俺が口を開く前に、会長がそれを遮った。 「おっと。文句は言えねぇと思うぞ?」 「………何でですか」 「テメェが女なのに男子校に通っている罰だ」 「え?」 ニヒルに笑う会長に、俺は口を開けて固まった。 「これで見逃してやるってんだ。ありがてぇ話だろうが?」 会長はそう言うと、俺にカッターシャツを放り投げてきた。 「ほら、さっさと着替えろ。まだ仕事は終わってねぇぞ」 呆然とする俺に、会長はさらにベストを渡してくる。 「あの、会長…」 「あ?何だよ。手が止まってんじゃねぇか」 「いや、さっきので……俺はお咎めなしなんです、か?」 退学を覚悟していたのに。 会長はため息をついて、俺のほうを見た。 「さっきそう言った。俺のそのマーキングで許してやるってんだよ」 「俺が女だってことは…」 「あん?そんなの言うわけねぇだろ。言ったら学園中大騒ぎだっつーの」 「や、そうですけど」 そういう問題なのだろうか。 ちょっとお堅い考えになっていることに気付き、ハッとする。 「会長……何か、企んでるんじゃないでしょうね?」 「は?」 「このことで弱味を握って、俺を奴隷にするつもりですか」 俺様会長のことだ。普通にそういうことをしそうで怖い。 「ほう。それもそれで悪くねぇかもな」 「最悪だよあんた」 でもそう言うってことは、その考えは頭になかったってことだよな。 何だ。案外良い人だったのか←
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