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「どうしたんです?」
「喜助くん…」
「…?」
部屋の雰囲気が変な事に気づき、目を点にさせる喜助。
そんな喜助に全員が驚いたような表情で見つめ返したまま、まるで時が止まってしまったかのように静まり返った。
訳が解らず眉を寄せていた喜助が何か言おうとしたが、何かを思い当たったような顔をしてから祐奈へと視線を向けた。
「もしかして、バレてしまったんですか?」
「なっ…!?君は、この子がお鈴ではないことを知っていたのか?!」
「えぇ、私が彼女にお鈴としておじ様達と会ってくれと頼んだのですから」
「何故そんな事を…!?」
坂本父からの質問に、喜助はヤレヤレといった感じで事の真相を打ち明けた。
先ほどまで取り乱していた坂本母も坂本父に支えられながらも喜助の話を静かに聞いていた。
時折、坂本母を気遣うように優しく撫でる坂本父の様子も落ち着いている。
「そうか…じゃあ君達は私達を元気付けるためにこんな事を…」
「騙してしまってすみませんでした」
「此方こそごめんなさいね。貴女の事情も知らずに責めてしまって…」
「いえ、心配する気持ちは凄く解りますから…」
祐奈がそう言うと、まだ顔色の悪い坂本母がにっこりと優しい笑顔を向けてくれた。
それだけで何だか救われた気持ちになり、祐奈も思わず頬を緩ませた。
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