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「……、すまない」
絞り出すように紡がれた言葉は、あやめの耳に静かに届く。
斎藤の瞳はゆらゆらと揺れ動いていて、どこか後悔の念があった。
謝罪の言葉は、どうしてこうも切なくさせるのか。
何故謝るの?強請ったのは私なのに。
あやめは言いたいのに、声が出ない。
謝らないでと、思いを込めて首を横に振る。
寧ろ強請ったのに怖くなってしまった私を許してと、斎藤の腕にすがりついて。
「アンタの事になると…歯止めが効かない」
苦笑と共に、斎藤は呟く。
斎藤が胸に抱く感懐(かんかい)
人であれば、それは誰しも抱くモノ。
ただそれは。
あまりにも性急過ぎて。
あまりにも強大過ぎて。
あまりにも、惹き付けられる。
「だから…あまり俺を煽らないでくれ…」
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