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翌日。
元気に出勤してきた紅を見て、縁が小さな声で聞いてきた。
「頭領。昨日は沖田さんと帰った後……?」
「え?あぁ、えへへ~」
照れ笑いをした紅を見て縁は全てを悟り、小さく微笑んだ。
「おめでとうございます、頭領」
「ありがとーん!」
縁は琥珀を呼んで数枚の書類を紅に渡させた。
「昨日頭領が帰られたあと、僕らの残りの役割分担を決めておきました。ここに書いてある通りです。あとは江戸からポンプが届き次第、京の街のどこでいつ火事が起きても駆けつけて消化活動ができると思います」
紅は渡された役割分担表を眺める。
いっやぁ、こうして見るとやっぱ改めて琥珀くんの字の上手さを実感するわぁ。
すごく見やすい。
紅は丁寧に一人一人の役割を確認すると、うなずいて縁を見た。
「うん、分担はこれでいいんじゃないかな。あたしも文句はないよ。宣伝活動はどうなってる?」
「順調です」
「そう。まぁ、火事がないに越したことはないけど、気を抜かずに仕事頑張ろうね!」
「はい」
-*-*-*-*-*-*-*-
紅たちが火消制度の準備を順調に進めているころ、京の北西にある古い物置小屋で良くない話が進められていた。
「近いうちに北西から南東への強い風が吹く。京火消だかなんだか知らねーが、頭領は新選組局長の身内で、しかも女だそうじゃねえか」
顔に傷のある男はニヤリと笑った。
「準備の整ってねえ今、奴らの面目を潰して信用を奪うチャンスだ。これを逃す手はねえ」
数人の男たちは下品な笑い声を漏らした。
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